静岡TS


静岡TSのはじまり

静岡TS・相談支援事業所まど

高木誠一

2011年、私(高木)が浜松協働学舎根洗寮という入所施設の施設長をしていたとき、地域定着支援センターの依頼で、一人の知的障害のある青年を函館少年刑務所から、施設に受け入れました。これがTSの始まりでした。

 

彼も努力して、1 年で就労してグループホームに移行しました。ところが彼はギャンブル依存症で、初めて得た給料8万円を得たお金をパチンコで使い果たしてし。うつ状態となって仕事も辞めてしまいました。市の精神保健福祉センターやダルクの依存症治療プログラムに参加するようになりましたが、ある日グループホームの事務所に入り番号式の金庫を根気よく開けて現金を盗み逃亡し、再度施設に戻りました。施設では自分の年金を出せと暴れることが頻回になりました。担当職は「心が折れそうだ」と漏らすようになりました。私は施設で抱え込んでいてはいけなと思い、堀江先生のTS養成研修の企画にすがる思いで乗って、地域で触法障害の人たちを支える仕組みを作ろうと考えました。

 

2013年に、第1回のTS養成研修を開催しました。根洗寮のスタッフが企画運営に中心的に携わったので、施設の職員たちのモチベーションは上がりました。ですが、第1回のTS養成研修には福祉関係者は少なく、パーソナルサポートのスタッフ、司法関係者らが中心でした。そこで、次年度、静岡市障害者協会(基幹センター)と浜松インクルージョン研究会(障害福祉のシンクタンク)に協力を求めて、静岡刑務所の見学会を開催しました。福祉関係者や相談支援のスタッフが参加しました。作業内容は作業所とほとんど変わらない風景をみて、刑務所にいる障害者や高齢者は、私たちが取りこぼしてきた人たちであることを参加者が痛感し、TSに対する関心が深まりました。

 

2014年の第2回TS養成研修には福祉関係者が多く参加し、TSが地域の福祉ニーズである認識が広がりました。その後も職員のためのエンパワメント研修、更生支援計画作成研修、刑務所見学会、相談支援専門員と弁護士との勉強会などを開催してきました。昨年には、県の弁護士会と協働する「司法と福祉をつなぐ」仕組みが誕生しました。更生支援の受け皿となる障害福祉サービス事業所、救護施設、高齢者施設も少しずつ増えてきました。



継続の秘訣(ネットワークの作り方)

 

1 臆せず、頼りになりそうな人に頼むこと、巻き込むこと(頼まれて嫌な人はいない)

2 味方にしたい人は研修会講師に招く(以後大事に思ってもらえる)

3 リスクは地域にバラまけ(リスクを地域で分かち合うこと)

4 ネットワークとは「ちょっと無理が頼める関係」(私も無理をきく)