滋賀TS


滋賀のこと

越野

 「息子が警察に連れていかれた!」

 生活支援センターに20:00ころにかかってきた1本の電話。知的障害、自閉症の男性のお母さんからでした。聴覚過敏のある彼が、赤ちゃんの鳴き声に反応して近くにいた女性を叩いてしまったという案件でした。“遅番”として一人勤務していた私は、お母さん以上にパニック。「ちょっと待って」というのが精一杯でした。(いま思えば、なにが「ちょっと待って」なのか…)これが2008年ころのことかな。記憶があいまいです。

 大津市には、よろず相談窓口として地域の味方になっていた社会福祉協議会に顧問弁護士さんがいました。私はなにかあると、この弁護士さんに相談。相談してお任せでそれで済むと思って、なんでもかんでも相談していたら、あるとき、弁護士相談担当の職員さんから「越野さん、落ち着いて。弁護士さんと一緒に勉強会をしよう。2年くらい勉強会すれば、司法になにをお願いするか、福祉でできることが何か、くらいは、わかるようになるよ」と言われました。そう提案してくれた職員さんは、そう私に言ったことはすっかり忘れてはりましたが。

 そして…地域の支援者、親御さん、弁護士さん等が集まって勉強会を始めたのが、TSの始まり。ほんとに2年やったらいろいろわかってきた。司法は特別なものではない、私たちも関われる!ってこと。この仲間は今でも一緒に活動しています。そして、勉強会にこれた「ラッキー」な人だけが知っている、ではなくて、本当に必要としている人に届けたいよね、という発想で作ったハンドブックが、活動を後押ししてくれました。冒頭のお電話は、まさにトラブルシューティングの案件で、彼の特性の見立てや環境調整はじめ、被害弁償など一緒にやりました。なにより彼の地域での暮らしがいきいき続けられるようにというために。

 滋賀では、2011年に定着支援センターのモデル事業として入口支援が始められたというのもTSの始まりには大きなことでした。それから、知的障害のある被疑者に国選でついてくれた弁護士さんを必ず捕まえて(文字通り捕まえて)離さない!というのも大事だったのかな、と振り返れば思います。